「口」のお話 第2回
〜お口の中に住む細菌たち 前編〜

2019.01.26尾崎隆一

皆様あけましておめでとうございます。
また機会を頂いたので今回は、虫歯〜お口の中に住む細菌たち〜の話を書かせていただきます。

虫歯といえば歯医者、歯医者といえば虫歯のイメージかと思います。
虫歯と歯周病、一般的に僕たち歯科医師が見る病気の2トップと言えるでしょう。
患者さんに虫歯があったとき「歯磨きはやってるんだけどねぇ」とよく言われます。
歯科疾患実態調査でも95%の国民が歯磨きをし、77%の方は一日2回以上歯磨き習慣があるという結果となっています。

ですが永久歯で虫歯のある方の割合は、25歳以上75歳未満では90%を超えています。
なぜ歯磨きをしても虫歯になってしまうのか?よく聞かれる質問ですのでまずは虫歯の
メカニズムから解説していきたいと思います。

口の中の空間には大量の微生物が!

皆さんのお口という空間には、一兆個を超える微生物が住んでいます。
こんな狭い空間に、地球上の人類全員よりはるかに多い数の生物が暮らし、日々生活を営んでいます。皆さんは微生物の住む国の王様といってもいいでしょう。

お口に住む微生物の中には、僕たちが食べたものから栄養を取って暮らしているモノたちがいて、その中の一部は食べたものの代わりに酸を出します。
つまり僕たちがご飯を食べると彼らは酸を出すのですが、その量が少なければ唾液によって酸が中和され、歯が溶けることはありません。

ですが、例えばジュースやお菓子など、微生物が栄養にしやすい砂糖の多いものを早いペースで食べたり飲んだりすると、唾液によってお口の中を中性に戻そうとする能力を超えて酸が作られてしまい、結果として歯が溶けてしまいます。
これが虫歯になるメカニズムです。

つまりお口の中では、歯が溶けたり治ったりを小さなレベルで繰り返していて、その天秤が溶かすほうに傾き過ぎると、歯には穴が開き、いわゆる虫歯と呼ばれる状態になるのです。
そして天秤を溶かすほうに強く傾けてしまうのが食習慣、治すほうに強く傾けるのがフッ化物と呼ばれるものです。

ただの歯磨きには効果がない?!

歯磨きをしても虫歯になるということは、ただ歯磨きをしただけでは天秤の傾きを治せないから、ということになります。
大事なのは歯磨きではなく天秤の傾きをよい方向に傾けるような日々の生活です。

例えば小学校での歯磨きを調査した研究(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-015.html)では、前歯には効果を認めたものの、奥歯では歯磨きするしないにかかわらず虫歯になる、という結果が出ています。

つまり歯磨きだけでは意味がないとさえいえるでしょう。
(歯周病の場合は歯磨きこそ唯一の予防手段なので、決して歯を磨かなくてよいというわけではありません!)
では現在、効果の見込める虫歯予防とはなんでしょうか?

というところで字数が尽きました。後編に続きます。

尾崎隆一
1992年東京都杉並区生まれ。歯科医師。2017年東北大学歯学部卒。歯医者だが砂糖を愛する生粋の甘党兼デブキャラ。