美術の中の家
第6回 犬小屋の探訪(神社の狛犬編)

2019.07.05高島 亮三
美術の中の家 第6回 犬小屋の探訪(神社の狛犬編)

【これまでのあらすじ】美術家の高島亮三(2003年当時31歳)は「犬小屋を散歩させる」ことに美術家としての表現の拠り所を見出し、本当の犬小屋が望む生き方(岡村孝子「Kiss」より歌詞の一部を改変引用。)を探す旅に出ていたがその結果、より事態は深刻化し「犬小屋(私)とは何か」という哲学的なステージに突入した。

私は2003年4月からの約4ヶ月間、初期衝動に身を委ね、全国各地…というか東京近郊を犬小屋と共に散歩してきました。「初期衝動」の意味がわからない? これは音楽評論家の渋谷陽一氏による造語であると言われています。Yahoo!知恵袋での「ロックの評論とかで知ってて当たり前のように出て来る「初期衝動」って言葉の意味がまったく分かりません。誰か教えて下さい。」という質問には、「ロックにおける初期衝動は「とにかくロックしてえ!」という感じのことです。音楽理論とか楽器演奏のテクニックとか頭使うようなことは二の次で「ロックせずにはいられない」という内から溢れ出る激情こそが「初期衝動」と言われているものです。」との回答が寄せられています。だいたいそのような理解で間違いないと思います。

とにかくロックしてえ!

私の手持ちのアルバムで、誰にでもわかりやすい具体例を紹介しましょう。
THE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)のファーストアルバム「THE BLUE HEARTS」(1987年発売)。これぞまさに「ザ・初期衝動」。今、40代半ば以上の男子達はリンダリンダと叫びながら、どんだけカラオケボックスで飛んだり跳ねたり(飲み物をこぼしたり)したことでしょうか。

Sex Pistols(セックス・ピストルズ)のファーストアルバム「勝手にしやがれ!!(原題:Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols)」(1977年発売)。これも有名どころ。体調がすぐれない時に聴けば、発狂しそうになること、請け合いです。

エレファントカシマシ(THE ELEPHANT KASHIMASHI)のファーストアルバム「THE ELEPHANT KASHIMASHI」(1988年発売)。上記2作に比べると一般的な認知度は低いが、とにかく何かに怒りまくっていて、そのとばっちりで、スピーカー越しに聞き手のコチラまでぶん殴られているような、居た堪れない気分に浸れるという稀有なアルバム。

ずいぶん前置きが長くなりましたが、まあ言いたい事は「犬小屋の散歩」における初期衝動とは「犬小屋を散歩させてぇ!」という感じで、コンセプトとかスキルとかは二の次で「犬小屋を散歩させずにはいられない。」という内から溢れ出る激情的な行動でありました。本コラム第4回の海水浴編は、その最たるものといえるでしょう。

犬小屋を散歩させてえ!

しかしながら、本能的な初期衝動の後には内省の季節がつきもの。実際の季節も夏が過ぎ、頭も少し冷静になったところで、そもそも「犬小屋」とは何なのか、という初歩的な疑問にぶつかりました(今更?)。そんなワケで、まずは犬のご先祖様に「いつ頃から犬小屋で生活するようになったのか」をリサーチしてみることにしました。さっそく近所の神社を訪問。二匹の狛犬が出迎えてくれました。ナイスミドルでなかなかの風格。

しかしながらインタビューを開始するも、狛犬達は「あー」とか「うん」とか曖昧な返事をするだけで全然話になりません。

「あー」


「うん」

神社の奥の方に移動すると、そこにも狛犬が。こちらの狛犬はかなりお年を召していて、どうやら先ほどの狛犬さん達と世代交代した様子。それにしても「あなた達本当に犬ですか?」って形相です。

ウィキペディア「天神社 (西東京市)」の掲載画像「以前の狛犬(右)」より引用)


ウィキペディア「天神社 (西東京市)」の掲載画像「以前の狛犬(左)」より引用

他の神社にも行ってみました。石材の質感を見るに、先ほどの神社の狛犬よりもずいぶん若造で、その分、血の気も多そう。話しかけてみると喧嘩腰で、まるでチンピラです。

「ああっ!?」

もう一方の狛犬は、あろうことか仔犬を踏んづけています。世が世なら警察沙汰ですよ、これは…

「んんっ!?」


これは非道い。

リサーチを終え、犬小屋も狛犬の気持ちになってみようと「あー」とか「うん」とか言ってみましたが、やっぱりその心は全然理解できません。特に「うん」とか言っちゃうと、犬が中に入ることができず、犬小屋の住居としての機能性まで失われ、ますます自己存在の意味がわからなくなってしまいました。

仔犬小屋と一緒に「あー」


出入り口を閉じて「うん」


それもそのはず。もうお気付きの方もいるかもしれませんが、諸説はあるが、どうやら狛犬の祖先は「獅子」らしい。「獅子」ってライオンのことですよね。ライオンってネコ科の動物じゃないすか! どうりで最初に訪れた神社の古参狛犬の顔つきが獅子舞のようなワケだ。

ツイッターアカウント、Cat Food Breath(@CatFoodBreath)の2019年1月6日ツイート分より一部引用

…こうして犬小屋の自分探しの旅はフリダシに戻った。どうやら安直に「犬」というキーワードに頼り、しかも近場で壮大な「自分という存在」を見出そうとしたことが失敗だったようだ。

てへぺろ☆(・ω<)

なので今度は「小屋」というキーワードにスポットを当て、1960年代から現代まで大規模開発を続けた結果、様々な家の型、つまり「小屋」の流行り廃りが一つのエリアで俯瞰できる、東京の南西部に位置する多摩ニュータウンまで探訪することにした!それでは次回「犬小屋の探訪(多摩ニュータウン編)」をお楽しみに!

高島 亮三
高島亮三(たかしまりょうぞう、1972年8月4日~)は、日本の美術家。東京都保谷市(現・西東京市)出身。趣味は、路傍の石採取・コケ鑑賞・ミニ四駆・岡村孝子など。第4級アマチュア無線技士。