演劇と空間の密接な関係
第7回 「天地開闢~アメツチハジメノトキ~」

2020.02.07萩谷至史
今回は、「古事記」を原作にしたパフォーマンスプロジェクト、「天地開闢~アメツチハジメノトキ~」のお話をします。

【Story】
世界の始まりは混沌。それは、全てが混じる、ほの暗くぼんやりした卵のような兆しだった。やがてそこから陰と陽が分離して世界が産まれ落ちる・・・。

音楽、舞、語りを始めとし和を織り交ぜた表象の中、一つの物語世界が開いてゆく。

【Artists】(いろは順)
文…萩谷至史
語…瀬戸瑞樹
舞…田中詩乃、雅子
音…TOW、岡田昇陽、fumi、河野広明
画…淺田史音、淺田彩、景浦充子
動…メガドリル軍曹

上演動画(Youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=dltCRrS10Xw&t=219s

この作品は2018年11月、東京ビッグサイトで行われた「デザインフェスタVol.48」のショーステージで上演されました。

「いろいろな分野で活動する人たちと和のパフォーマンスをつくりませんか?」
と、ライブや劇伴などで活動するアコースティックユニットのTOWのお二人に声をかけていただき、参加することになりました。


このプロジェクトでは、萩谷はテーマの選定とテキスト執筆、演出をすることになりました。
ユニークなのが参加メンバー。
剣舞・巫女舞・フルート・和太鼓・アコーディオン・ギター・ベース・神社の神職さんと、バラエティ豊かでした。
多様な人々と作品作りをすること、そして、ビッグサイトという大きな会場での演出は初めての体験でした。



選んだ作品は、「古事記」でした。

アマテラスオオカミ、スサノオノミコト、ヤマタノオロチ、ヤマトタケルノミコト、因幡の白兎…「古事記」に登場するキャラクターたちです。
「古事記」は、現存する日本最古の歴史書で、712年に太安万侶という人物によって編纂されました。
そんな1300年以上前の作品を、東京ビッグサイトという場でパフォーマンスにしたら面白いだろうな、と考えました。
またデザフェスは、海外の方も多く訪れるイベントなので、日本の神話を知ってもらういいきっかけにもなります。

ただ、古事記は三巻からなる長大な物語。持ち時間は10分程度だったので、全てを上演するわけにはいきません。
そこで、冒頭のイザナギとイザナミの物語を作品にすることにしました。

「古事記」は、「天地初発之時(アメツチハジメノトキ)・・・」、現代語に訳すと「天と地が初めて現れたとき」という書き出しで、世界の始まりの描写から始まります。
世界が始まり、そして次々と神様が産まれていきます。その中で生まれたのが「イザナギノミコト」と「イザナミノミコト」。

この男女の神様は、結婚をし、日本列島の島々を次々と「産んで」いきます。
さらに幸せの中、様々な神様を生んでいく二人。しかし、ある日、イザナミが火の神を産んだ時の火傷がきっかけで死んでしまいます。イザナギは、イザナミを呼び戻そうと黄泉の国に向かいます。しかし、イザナギはそこである禁忌を犯してしまい、怒り狂ったイザナミに追いかけられ、逃げ帰ってきます。
こうして、日本列島を産んだ二人の神は、永久に離れ離れになってしまうのでした。

来場者は、この日本の基になる物語を見終わった後、会場を歩きます。そこで目にするものは、2018年の日本。その歴史に思いをはせてもよし、これからの未来を考えてもよし。そんな構造の作品を目指して創作を開始しました。

このクリエーションでキーになるのは、やはり、様々なバックグラウンドを持ったメンバー。
剣舞や和太鼓を作品作りに取り入れたことなんてなかったし、巫女舞に至っては生で見るの自体が初めてという状態でした。稽古はいつもより慎重に言葉を選びながらの作業でした。最初は互いに探り探りでしたが、稽古を重ねるうちに、なんとなく共通の言葉が見えてきます。
こうやって実験をする中、世界ができる混沌を舞いで表現したり、神話の持つ神秘性を音楽で表現したりと、様々な表現が産まれました。


クライマックスのシーンは剣舞と巫女舞の二人が、音楽をバックに華麗に舞います。これは、全員で少しずつコミュニケーションを重ねながら創ることができた、最高の見せ場になりました。


様々なジャンルの人々との創作は、いかに共通のイメージを作り出していくかが重要です。
最初は時間がかかりますが、共通のイメージができてくると、多様性の力が一気に爆発する。
2019年に萩谷は、様々なジャンルで活動する芸術家と分野横断的なパフォーミングアート「OVUM:いつか産まれてくるワタシタチのための時空間コラージュ」という作品を創るのですが、「天地開闢」のこの経験があったからこそ産まれたものでした。

さて、萩谷至史が主宰・脚本・演出をつとめるmooncuproofでは、2月13〜16日に高田馬場にあるプロトシアターにて新作「48.80」を上演することになりました。
「民主主義とは?」というテーマの演劇です。
今回は、「国際舞台芸術ミーティングin横浜2020」のプログラムのひとつ「TPAMフリンジ」に参加しています。
ご興味ありましたら、ぜひいらしてください!


●mooncuproof#13 「48.80」

【日時】
2/13 19:00〜
2/14 14:00〜/19:00〜
2/15 14:00〜/18:00〜
2/16 12:00〜/16:00〜

*開場は開演の30分前です
*上演時間は約100分を予定しています。

【会場】
プロトシアター
東京都新宿区高田馬場3-38-3
JR・地下鉄東西線「高田馬場駅」より徒歩13分
http://prototheater.la.coocan.jp/

【チケット料金】
3,500円(前売り)
4,000円(当日)

【脚本・演出】
萩谷至史

【出演】
加藤葉子
木谷美絢
丹澤美緒
土屋由惟
中村ひより
冨名腰彩乃
水埜奈央

【ご予約・お問い合わせ】
https://ticket.corich.jp/apply/104916/

【公演サイト】
https://hagiya4423.wixsite.com/mooncuproof/next

【TPAMフリンジ 公演サイト】
https://www.tpam.or.jp/program/2020/?program=48-80

萩谷至史
1989年生まれ。茨城県東海村出身。劇作家・演出家。コーヒーとビールが大好き。 mooncuproof主宰。第16回杉並演劇祭 優秀賞受賞。