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はじめまして、Akiです。今回からフィンランドをテーマに、あれこれ書かせてもらえることになりました。第1回目はフィンランドの保育所と空間の使い方について。
保育所と家具
フィンランドでは、保育所のほとんどの家具や設備は、大人の高さに合わせられている。
テーブルにつくために、子ども達は椅子によじ登る。子ども用の椅子は脚が長く、座る場所は子どもサイズになっている。
手洗い場には、踏み台が用意されている。
踏み台に登ったものの、蛇口までの距離が遠く、水を出すのに一苦労。やっとの思いで、水を出すことに成功したと思ったら、まくり忘れた袖に水がかかる。
便座も大人サイズ。踏み台が置かれている。子どもたちは、踏み台を使って便器に座る。たまに、お尻が便器にすっぽりはまってしまいそうな子どももいる。
子どもの衣服や荷物をしまう個人ロッカーも、もちろん大人の高さになっている。
子どもたちはロッカーに向かって、脱いだスリッパや衣服を放り投げる。ロッカーにはフックがついていて、そこに上着をひっかけるようになっている。しかし、フックも高い位置にあるので、だいたいの上着はフックに到達せず、ロッカーの下の方に放置されている。
昼寝用の寝具には様々な種類がある。
マットレスや2段ベッド、スタッキングベッドを使う保育所が多い。最近増えてきているのは、壁収納式の折りたたみ2段ベッド。これは出し入れも簡単。
日本は空間の使い方の重点が下の方にあって、フィンランドは上の方にある
私が日本の保育所で働いていた時には、ジャージの膝の部分がよく擦り切れた。手洗い場、テーブル、椅子が子どもサイズだったので、いつも腰をかがめるか、膝をついて作業をすることが多かった。
フィンランドでも日本同様、室内では靴を脱ぐ。保育室でも上履きに履き替える。床にも座るが、座椅子やクッションがあり、腰への負担をなるべく減らすように配慮されている。
また、保育室にはソファやアームチェアを置いているところも多い。子どもは床で遊んでいるけど、大人はソファに座っていることがよくある。日本の保育所にはそういった大人用の椅子があるところは少なかったと思う。
キャスター付きの椅子もあらゆるところにあり、椅子と一体になって移動することが可能。子どもの着替えを手伝う時等、これで腰への負担がだいぶ解消される。
保育所と間取り
保育所の空間の使い方は間取りの面でも興味深い。
日本では一般的な職員室。フィンランドでは職員室があるところは珍しい。職員室があっても、個人の机はない。大きい机があるだけで職員室というより、作業室という感じ。
保育室の間取り決めの時、一番重点を置いているのは休憩室だろう。
新しい保育所だと、休憩室にはキッチンや冷蔵庫があり、コーヒーメーカーはもちろん、くつろげるソファやクッションがある。ちなみに、保育士の平均休憩時間はたったの10分。
敷地が大きくて休憩室はゆったりと広いけれど、子ども用のトイレや子どもが着替えたり靴を履いたりするスペースが、狭いと感じることがよくある。このトイレを設計したのはいったい誰だと思うことも。
大人に合わせた家具や設備が一般的なフィンランドの保育所では、子どもがイスや踏み台から落ちそうになることもある。もちろん子ども用サイズのイスや机もあるのだが、2段ベッドに登る時は、必ず後ろに大人が立たなくてはならないし、安全面への配慮が欠かせない。
それでも、腰や膝への負担を考えてこの設計になっているのだろう。大人が子どもに合わせるのではなく、子どもが大人に合わせる。それがフィンランドの保育所と空間の使い方だ。