フィンランドのあれこれ
第3回「フィンランド ― 家と空間と人」

2020.09.25Aki
フィンランドのあれこれ 第3回「フィンランド ― 家と空間と人」
フィンランド人たちは家に人を招くのが好きだ。年齢、性別に関係なく何か事あるごとに家へ招待される。

日本だと誰かが家に来るとなると、掃除をしたり、お菓子を用意したり、送迎のこと等何かとハードルが高い。招待された側も何か買って行かなくては、と気を遣う。フィンランドでは家に呼ばれたからと言って特に気を張る必要はない。以前友達に、家に招待された際、到着して少なくとも1時間、雑談タイムが続いた。1時間経った頃、“あ、コーヒーでも飲む?”と聞かれた。そしてコーヒーを飲みながらまた話が続いた。そして帰宅した。

一方で、ご飯を振る舞ってくれる場合も。
フィンランドに来て1年目の時、私は保育所でボランティアをしていた。その時、色々な保護者や先生が家に招待してくれて、一緒にご飯を食べることも多かった。食後、しばらくするとコーヒータイムとなり、そこでさらに菓子パンやらデザートを食べる。ボードゲームやカードゲーム等をすることも多い。ここでも何がメインかと言うと、とにかく話すことだ。

大皿からみんな自分のお皿に料理を盛る

初めてその人の家に行くと、だいたいセットで付いてくるのがルームツアーだ。
玄関から、リビング、キッチン、寝室、ベランダ、サウナまで一通り見せてもらえる。これも日本ではなかなかない。フィンランドでは、家はもちろんプライベートな空間だけれど、それをみんなに共有したいという気持ちも同じくらいあるように思う。ペットも人に慣れているのか、その辺でくつろいでいる。家が好きという理由の他に、フィンランドは外食が高いので必然的に家に集まるようにもなっている。

フィンランドの一般的なキッチン コンロの下には必ずオーブンがある

フィンランドには、tupaantuliaisetと言う、新居お披露目パーティーがある。招待されるとだいたいみんなプレゼントを持参する。新居では、カクテルパーティー形式の食事が用意されている。
他にも、高校卒業、大学卒業の時には家でホームパーティーを開く習慣も。大人になっても誕生日会を家で開く人も多い。クリスマスにもみんな集まる。

さらに、自宅がどれだけ素晴らしい空間であっても、離れたところにコテージを購入する人も多い。コテージは冬はほぼ使用できない。ただでさえ短い夏の間、それでもコテージで過ごしたいのだ。
この感覚も日本人には理解し難い。私もコテージに行くのは好きだけれど、自分でこれを維持しないといけないとなると絶対にコテージは購入したくない。コテージに数週間こもるなら、ある程度の食材を買い込まなければならないし、トイレは水洗じゃないので年に1度は“何か”しなければいけないし、サウナ用の薪だって自分で調達しなければならない。

そこまでして、自分のくつろげる空間を作り出そうとするフィンランド人、ほんとうにすごい。特に今年はコロナの影響で海外旅行に行けなくなっているので、コテージ購入率も上がっているに違いない。

コテージからのこの眺めが素晴らしい

サウナや暖炉の薪も自分たちで調達する

よく、北欧は冬の時間が長いからみんな家にいる時間が多くなり、インテリアが充実している、と言われるが、たしかにそうだと思う。

フィンランドはマイホーム志向が高く、20代で家を購入する人が多い。結婚もしていない2人が家を購入することも。
なぜ、このようなことが可能なのかと言うと、まず、銀行でお金を借りやすいというのが一つの理由だろう。それと、引っ越ししたくなった時、ローン未払いでも売却しやすい(らしい)。フィンランドは物価が高いので賃貸料金も自然と高額になる。ならば、ローンを組んでマイホームを持った方が後々経済的にも良いのでは。と考える人が多い。

それに加え、リフォーム文化もあり、中古住宅を購入して、みんな自分好みに変えて行くのが好きだ。ある友人は、事実婚のパートナーと家を購入、リノベーションをして、2年後に破局し、さらにその2年後アパート1室を購入していた。驚くのは、その友人が正規職ではなく、自営業で収入が安定していないのに、銀行でローンを組めたことだ。

日本の住宅事情とは少し異なるフィンランドの住宅事情。もしフィンランドで知り合いができたら、その人の家に行ってみてください。

アルヴァル・アールトが設計したコトゥカにある住宅

Aki
兵庫県出身。日本で幼稚園教諭として勤務したのち、現在フィンランドで保育士をしながら暮らしている。フィンランドでSmooth Groove Orchestraというバンドに所属している。趣味はピアノと絵をかくこと。インスタグラムhttps://www.instagram.com/finlandogo/