建築士から離れようと思った話 ①

2020.12.29渡辺羅須
建築士から離れようと思った話
私は大学では建築を学んでいました。
ただ現在は一般的な建築士と言われている世界からは離れています。
このコラムではそのきっかけになったお話を書いてみようと思っています。

実はまだ言葉にできるほどまとまっていないし、先輩方から言わせると若造が何を言ってるんだと思われる部分も多いと思いますが、2020年という契機に書いてみたくなりました。

大学で建築学を専攻し、入学後はドンドン建築にのめりこんで行きます。建築の設計も歴史も環境も全てが好きで、本や雑誌を読むたびに知的好奇心は刺激され、心底ワクワクしていくのがはっきりと分かりました。天職なのではないかと大学3年生までは本気で思っていました。(残念ながら設計の能力は下の下だったのは残念でしたが。。。)

在学中に先輩方の紹介もあり、設計 _事務所でアルバイトをさせてもらう機会がありました。家に帰らずに、睡眠時間も削って一生懸命働く職員の姿はとても印象的でした。進路の時期になると多くの学生が大学院に行く中、迷った末に、早めに実際の建築の世界に入ったほうがいいと思い、大学院には行かず働くことを決めました。大学3年生の夏でした。

多くの建築士の人がそうであるように、一生かかっても理解する事ができないほど奥深い世界に完全に魅了されていました。建築の世界はどうしようもなく 「カッコ良かった」のです。

話は変わりますが、私は1993年生まれなので、運動部などではまだ根性や努力と言った単語がよく使われていました。上手い人よりも努力する人、長く練習をする人が「カッコいいい」と考えられていた時代だったように感じます。
前述したように建築の世界では、そのような泥臭さがあって、やはりそれを「カッコいい」と感じている自分がいました。

そんな時期にある友達と食事をしました。建築とは無縁の世界にいる人でしたが、彼が「建築家って豊かな空間を作るとか言ってるのに、自分は豊かな空間に住んでないよね」と言いました。「いや、そんなことないよ」と言おうとしたのですが、よくよく考えると確かに。。。 _
口では「建築における豊かさは」とか「住宅はこうあるべき」とか話しているのに、徹夜ばかりして、ろく家に帰らず、街もろくに歩いていないのに何を言っているんだと、自分がカッコイイと感じている世界が矛盾で溢れているのではないのかと、そんな気がしてきました。

建築士になりたいという熱が急速に冷えて、現実的な思考に変わっていきました。
そもそも、ろくにキッチンを使っていないのに、使い易いキッチン周りがデザインできるのでしょうか?
車椅子を使った事がないのに、バリアフリーをデザインできるのでしょうか?
公園にほとんど行かない人が、都市に緑地が必要だと言って信用できるのでしょうか?

どうやら「カッコいいから」では済まされない、何か大きな矛盾が抱えているのでは。。。

そもそも建築を作る目的は、使用者(発注した人)が豊かだと感じる事なのだと思うのですが、大学で教えてもらった事の中に、この「使用者の視点」での会話があったのだろうか。。。

悩みを抱えたところで長くなりましたので、今日はここまで。

渡辺羅須
1993年、東京都生まれ。好きな食べ物は納豆。好きな動物は猫。スポーツは大体好き。小学校~高校まではバスケをしてた。マイブームは建築。口内炎ができやすいのが悩み。