フランス建築③
~劇場空間~

2021.11.19渡辺羅須
フランス建築③ ~劇場空間~

昔、少しだけ演劇に関わった事がある。実際に舞台にも立ったし、事前の準備なども目の前でみていた。個人的には演劇にハマるという事はなかったが、舞台に出ている役者も、それを鑑賞した後に楽しそうに喋っている人も好きだ。
でも舞台に関わる事で一番好きなのは始まる直前と終わった直後だ。開演15分前までは少し興奮しながら思い思いの時間を過ごしているのに、5分前になると少し緊張と興奮で口数が減ってきて、上演間近になると示し合わせたように会場全体の口数が減り、全員で開演を待つ。あの空気感、匂い、興奮している感じがとても好きだ。

そして終わった後はこれが逆再生される。終演後すぐは口数が少なく、5分経つと喋り始め、15分経つ頃には興奮と緊張からの解放で思い思いの話をする。この一連の空気を感じるためだけに舞台を見に行きたいと思う事もある。

その最高潮瞬間に出会った。舞台はフランスのアヴィニョン。この時期は演劇の街と呼ばれるほど街のいたるところで演劇が行われている。

場所は教皇宮殿の中の屋外特設ステージ。

数千人は入るであろう会場が満員。

開演20分前、盛り上がりが凄い。

開演5分前、来賓席を全て埋まり、外にいた人も中に席に着く。

開演直前、緊張と期待で会話が少なくなり、ただ舞台を見つめて待つ人が多くなる。

暗転、最上級の緊張で糸がピンと張り、2000人以上が会話をやめる。

役者登場から15秒、度肝を抜かれるパフォーマンス。全員が息が呑む音が聞こえるようだった。

終演直後、全員が息を吐く音が聞こえる。拍手まで時間が空く。緊張の糸が緩んでいく。

終演1分後、役者が登場し挨拶。口笛を鳴らす、ブラボーと叫ぶ、悲鳴にも似た口笛を送る人もいる。

終演5分後、鳴り止まない拍手と声援。この頃には8割以上がスタンディングオベーション。屋外なのに拍手で空気が揺れているようだった。

終演15分後、帰路に着く。全員が一緒に来た人と興奮しながら何か喋ってる。

舞台の魅力があまりにも良く、私は終わった後にしばらく寝られないくらいの興奮だった。加えて、観客全員で良いものを見たという感覚がすごかった。意図せず一体となり、思い思いの言葉を発しているのにどこか仲間意識が生まれてた。月並みだが、あれは体感しないとわからない。凄まじい経験だった。

今日はここまで。

渡辺羅須
1993年、東京都生まれ。好きな食べ物は納豆。好きな動物は猫。スポーツは大体好き。小学校~高校まではバスケをしてた。マイブームは建築。口内炎ができやすいのが悩み。