カカポの武者修行
第二回 「フィリピンの雨はたまにしか止まない。~後編~」

2019.09.28渡辺羅須
カカポの武者修行 第二回

※注意:頭の中でターミーネータの「ダダっダっダダン」って効果音を流しながら読む

緊張しないように穏やかに、かつゆっくり喋った「Good morning」が裏目にでる。
眼力が半端じゃない。まずい。向こうのペースだ。飲まれる。いや、もう飲まれた。
脇は?確認するのもヤボ。台風直後の多摩川レベルの水量。

ここでカカポのロゴの話に進む。
ここしかない。流れを自分のペースに!!

「カカポが飛べないのは太ったからなんです。敵がいない土地で怠けて食べ過ぎて飛べなくなる。まるで人間のような鳥なんです。」
(あれ、ウケない。。クスッともしない。。。)
「じゃアメリカは凄い政策だね。大統領のおかげで皆スリムになる。」

一同爆笑

笑いの、皮肉のレベルが違う。
ベジータがフリーザの最終形態を見たときだって、こんなに絶望感は感じていなかったと思う。
桁外れの笑いに包まれた会場で、1人ナイアガラの滝を脇に抱える。
しかし、ここしかない。ここで流れをつかめないと、この試合は負ける。
2015年のラグビーW杯の日本対南アフリカ戦ばりの「ここでやらなきゃ、いつやるんだ」感を抱いた。ガッツリとしたスクラムを組みにいく。

少し飛ばし気味に、勝負のスライドに早めに移行する。
子どもが夢中過ぎて、変な顔になっている動画を流した。

何人かが声をあげて笑った。

いけーーーー!!!という最後のトライの前の実況の声が聞こえたような気がした。
様々な場所で行ってきたワークショップの動画を流しながら解説をした。
大きなスクリーンだったので、迫力があるのは分かっていた。
ここしかなかった。すがるような思いだった。

前日まで加工を重ねた動画は好評だ。
いいぞ、いける。

最後に茶目っ気全開の
「買ってね」

しばらくの沈黙の後、一番年上の方が
「今日から君のことをカカポと呼んでいいかい。」

一同爆笑。

やられた。
完全に彼に全てを持ってかれた。
愛想笑いなのか、本当に笑っているのか分からないくらい。
脇のナイアガラは嵐の後のような水量になっていた。
汗なのかナイアガラなのか

ただし、ケンカに負けて勝負に勝った。
プレゼンは成功だった。

質問されることは予め用意していたなかで対応できた。
全てが終了後、何人もの人が詳しい情報を聞きにきた。
1人は、カカポしかない。帰国後すぐに担当者に連絡をとる。名刺をよこせ。
と言われた。
小さな、とても小さな足跡がフィリピンに着きました。

渡辺羅須
1993年、東京都生まれ。好きな食べ物は納豆。好きな動物は猫。スポーツは大体好き。小学校~高校まではバスケをしてた。マイブームは建築。口内炎ができやすいのが悩み。