家の中の家 カカポの話

2020.11.17渡辺羅須
家の中の家 カカポの話
大学で建築を学んでいると時々「空間が豊か」という言葉を使う人がいます。なんとも抽象的で、わかるような、わからないような言葉ですが、これがカカポを開発する時のテーマになっていた、というのがこのコラムのお話です。「家の中の家 カカポ」は家の中をもっと豊かにする為のDIYシステムです。

大学の建築学科には設計課題があり、忘れもしない3年生の時、みんなが必死に作った建築の模型や図面を見ながら、某教授が呟いた「悪くないんだけど、空間が豊かじゃない」

は〜・・・何言ってるかわかんねーよ。カッコつけてんじゃねーよ。具体的に言えよ。こっちとら徹夜明けで頭まわってねーんだよ。政治家気取りか。何様だよ。空間の豊かさなんて人によって違うだろ。

と、当時とても粋がっていた私は感じていました(これが理由で4年生では設計の授業をとらなかったのはここだけの話)。まあでも、教授が言いたい事も分からない訳でもないんですよね。素敵な建築に出会った時に「良かった」「最高だった」としか表現できない事があります。終いには「行けばわかる」っと言ってしまった時は、俺は本当に建築学科を卒業したのか不安に思います。

フランスにある建築。朝の2時間ほどしか見られない不思議な景色。「うわあ」しか言えなかった。


フィンランドにある建築。写真ではあまり好きではなかったが、中に入ると圧倒的な空間が広がる。すげえとしか言えない。


話が逸れそうなのでカカポの話に戻します。「空間が豊か」とは何か、の答えはどこかまでいっても「人による」だと思うのです。しかも、とても多様で、時間とともに変化する。対して建築は不動産と書くくらいですから、多様性や変化にとても弱いのです。加えてLDK(リビング、ダイニング、キッチン)など、部屋の用途を決定した建築の場合、変更はより困難で面倒になってきます。もっと家の中の空間を豊かにできる、つまり変化に対応できる、そんなDIYのシステムを作ってみよう、と考えたのがカカポの始まりです。

まず絶対に必要なのが柔軟性。人が豊かだと感じる条件はとても多様で時間によって変化する、人の生活や気分の変化に合わせて家の間取りも変われるように柔軟性のあるシステムにしよう!
そして工具は使わない。工具を使うことで制限される事項(騒音問題、怪我の恐れなど)が多いので、もっと手軽に、性別・年齢・筋力に関係なく家の中を改造できるシステムでないといけない。
そして、楽しい事。空間が変わる楽しさはもちろん、作っている最中も楽しくなるようなシステムがいい!


様々な検討をした結果、紙管を使う事を選びました。軽い事、リサイクルされた材料でできる事などの条件から紙管を選び、それに合うジョイントも開発。シンプルで明快なシステムの為にジョイントの数は必要最小限に。この辺りに関して詳しく聞きたい人は今度飲みにでも誘ってください。

さて、システムとしてはうまくいきそうだ。そして販売をすると決めた時に名前を考えなければならない事に気がつきます。「カカポ」という名前に関しては今度別のコラムに書くとして、サブタイトルが欲しいとなり、紆余曲折あり「家の中の家」として小さな家を作れるキットにしようと決めました。もちろん子ども部屋や仕事部屋としてニーズがあると思ったのはもちろん、「家の中に自分の家を作る」=「家の中に自分の好きな空間を作る」という感覚が大事だと思ったからです。
自分の好きな空間を置き、また時間が経てばそれを変え、自分が豊かだと思う空間に常に変化させていく。変化こそ豊かさなのかもしれない、と名言ぽい事を呟いて今日はここまでにしたいと思います。

渡辺羅須
1993年、東京都生まれ。好きな食べ物は納豆。好きな動物は猫。スポーツは大体好き。小学校~高校まではバスケをしてた。マイブームは建築。口内炎ができやすいのが悩み。