演劇と時空間
第1回「演劇は面倒くさい」

2019.02.23萩谷至史
演劇と時空間 第1回「演劇は面倒くさい」

初めまして。劇作家・演出家の萩谷至史(はぎやよしふみ)と申します。
普段は、演劇団体mooncuproofにて脚本・演出、板橋小劇場ファイト!の座付き作家、市民ミュージカルの演出・演技指導などの活動をしています。

「で、演出家って何する人なの?」

という質問をよく受けます。
そう聞かれたとき私は、「時空間を作る人だよ」と答えることにしています。

私は時空間を作る演出家として、「社会や自分自身について、答えの無いテーマを観客に問いかける」というスタンスで舞台を作ってきました。
例えば「ミカン、ヒカリ、到達」という作品では、日本家屋を劇場に、差別をテーマにしました。

そして今年の2月末から始まる舞台「2019、Tokyo、それから、あるいは→」は、「信じる」ということがテーマになっています。

これまでこうした作品の制作のなかで、演劇について色々考えてきました。
その中で出てきた演劇の一番の特徴は

「演劇は面倒くさい」

ということです。

今やあらゆるコンテンツがインターネットで視聴可能です。
演劇は、会場までわざわざ行かないとならないし、行ったら行ったで、劇場に閉じ込められて90分とか120分とか座りっぱなしで、目の前の出来事を見せられます。しかもその間携帯の電源は切って、誰とも話す事はできません。基本的に、古代ギリシャの時代からやっている事は変わりません。超絶アナログです。

しかしあらゆる情報がもの凄いスピードで行ったり来たりしている現代、そのアナログな面倒臭さが、逆に価値を持つのではないかと思っています。

皆さんの日々の生活の中で、90分とか120分とか、目の前で起こっているひとつの物事を見ながら、じっくり社会や自分自身について考える機会がどれだけあるでしょうか。
近年ライフスタイルや私たちを取り巻く社会は多様化しました。「絶対に正しい答え」の無い世界に生きています。そんな中、自分自身の頭でじっくり考えて、自分自身を定義していくことはとても大切なのではないかと思っています。
私が問いかけの演劇をしようと試みているのも、その理由からです。


この連載では、そんな萩谷の演劇がどうやって作られてきたかを、過去の作品を通してお届けしていく予定です。よろしくお願いします。

●公演情報
mooncuproof#10 「2019、Tokyo、それから、あるいは→」
【脚本・演出】 萩谷至史
【日程】 2/28 19:00- 3/1 14:00-/19:00- 3/2 14:00-/18:00- 3/3 12:00-/16:00-
【会場】 遊空間がざびぃ
【Web】 http://hagiya4423.wixsite.com/mooncuproof
【ご予約】 http://ticket.corich.jp/apply/97020/001/

萩谷至史
1989年生まれ。茨城県東海村出身。劇作家・演出家。コーヒーとビールが大好き。 mooncuproof主宰。第16回杉並演劇祭 優秀賞受賞。