前回のコラムですが、「いや、読みづらいし、何言ってるか分からないよっ」と言われました。
改めて読むとうむむ。。。鮮度100パーセントが必ずしも良いとは限らない、という江戸前寿司みたいなことを思いました。今回はもう少し読みやすくなったはず!
伝われ〜
それでは「Arkrex」という、街や都市、建築がテーマの映画イベントの、
残りの3作品を見た感想、行きます!!
『I am Gentrification. Confessions of a Scoundrel』
2018/Thomas Haemmerli.
「私はジェントリフィケーション。ならず者の告白。」2018/トーマス・ハメッリ
ジェントリフィケーションとは高級になっていくという意味で、建築の場合には、粗末な建築がリノベーションをすることで高級な中古物件として扱われる、という事を示す場合が多い。またこれは建築単体だけではなく、街や国全体で起こる現象として扱われる事もある。
作品はコラムニストで作家であるThomas Haemmerli 自身の生活を描いたもので、彼は世界中に住居をいくつも持ち、今年はここ、夏の時期はここというように移動しながら暮らし、暮らしていない期間は他の人に貸すなどして家賃収入を得て生活している。それぞれの住居の建物も、自身でリノベーションをし、良い建築として使用されている。
これだけだと、別荘をいくつか所有する単純に優雅で憧れの生活と思えるが、映像ではリアルな社会情勢と生活の実態の映像を重ね、彼のユーモラスな言動をコメディタッチで描いて、興味深い生活が見えてくる。
日本でも多重拠点の生活が話題になって久しく、このような内容は参考になったし、何より自由奔放に見える生活でも実際には苦労も多いという、理想論では終わらない描き方がよかった。ただ本題はここから。
実際に本人が会場に来ていて、視聴後に質問コーナーになった。
ある男性が「あなたは環境問題についてどう思いますか?」と質問した。多くの専門家が指摘しているように、飛行機での移動は環境に負荷がかかる。彼の生活は面白そうではあるが、世界中を移動する度に環境に負荷をかけることになる。ヨーロッパでは現在、非常に敏感な問題になっているのだ。私もドイツでベルリンからデュッセルドルフに移動する時に、友達から、飛行機じゃなくて電車かバスの方が良いよ。時間がかかっても良いなら多少高くても電車か車にしてほしい、と勧められた。
彼の返答は「良い質問だ。これは2017年に制作していて、その時は私は環境問題に関して深く考えていなかった。今は私も生活を改めて、考えているよ。だからこれは社会派コメディとして捉えて欲しい。」というようなことだった(英語が全て聞き取れたわけではない…)。
日本でも2拠点生活や、場合によっては無拠点で生活するライフスタイルを提案している人は多い。移動と環境問題は密接に結びつく。今後は日本でも問題になる部分だっと思った。
『Whose City?』2017/ Hans Christian Post
「誰のまち?」2017/ハンス・クリシュタン・ポスト
戦後のベルリンをコミュニティや建築的な背景から描いた作品。ワイマール憲法や東西の分裂、ベルリンの壁の崩壊などを経て、どのように都市を作ろうとしたのかを、史家、建築家などにインタビューしながら話を進めていく。
宗教、都市史、敗戦、人の生活の豊かさ、コミュニティの形成、東西の分断など、複雑でかつ分厚い歴史の積み重ね、その複雑さをなくすのではなく内包できる都市を作るために試行錯誤を繰り返した人々の姿を描いている。
街の中心部であっても、そこにコミュニティがあるなら、それを迂回するようにして地下鉄を作る。コミュニティは壊さない。戦争によって街は破壊されたが、人間にとっての本当に大切なことは何なのかと考えさせられる。
私は「ベルリンって何が面白い?」と言われたら、月並みだが「いろんな文化を感じられるところが面白い」と答える。ナチスや戦争、東西分断など歴史的な問題、大小さまざまなコミュニティの存在、長い歴史のある芸術と現代アートやクラブ音楽などに代表される最先端の芸術、加えてビールやソーセージなどの食文化。他のドイツの地域では感じることができない多様性と文化的な背景がこの街にはあると思う。ベルリンという街の特殊性を改めて認識することになった。
『Planeta Petrila.』2016/Andrei Dascalescu
「プラネタ ぺートリア」2016/ アンドレ ダスカレスコ
ルーマニアのとある炭鉱の街の崩壊を、街のアーティストを主人公にして描いた問題作(良い意味で)。
めっちゃよかった。炭鉱しかない街が政府の政策の方針で炭鉱を廃止し、それに反対する住人と、反対のデモや行動をアートとして表現していくアーティストが入り混じる。珍しくはないストーリーだが、時折鮮やかなグラフィックやさまざまなアート作品をはさみこみ、映像のクオリティを上げて、それでいながら圧倒的な「生感」で画面に引き込む。
炭鉱で働く人達にはもう行き場がなかった。街も炭鉱がなくなったら存続していく事ができない。だがルーマニア政府の方針も間違ってはいない。環境問題はそれほど深刻である。住人の生活、街の生業は消える。消えゆく街の最後。数年後には誰も覚えていない。鮮やかで強烈な最後だった。それほど映像の「生感」とアートの「鮮やかさ」はすごかった。直接肌に訴えてくるような、そんな感覚だった。
総括して、このイベントは良かった。久しぶりに圧倒的な量の情報のインプットをした気がする。映画館はやっぱり良い。始まる前に静かになり、暗くなり、高まる緊張感、流れ始める音がたまらない。
今日はここまで。
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〜カステルバッキオ美術館/イタリア〜Part2