気にしてミル 第3回
「Arkrex〜前編〜」

2019.12.20渡辺羅須
気にしてミル第3回「Arkrex〜前編〜」

フィンランドにで「Arkrex」というイベントがあった。街、都市、建築がテーマの映画を放映するイベントで、期間は2日間、1日に約6本を放映する。本日はその感想を。
思うところを雑多に書いていくので読みづらい部分はご容赦お願いします。

初日は行けなかったので2日目の途中から参加し、以下の映画を視聴した。
・Enchanted Crimée – A multistoried Architecture. Sarah Bitter. 2018, 30 min
・The Infinite Happiness (Bjarke Ingels Group BIG). Ila Bêka & Louise Lemoine. 2015, 85 min
・I am Gentrification. Confessions of a Scoundrel. Thomas Haemmerli. 2018, 98 min
・Whose City? Hans Christian Post. 2017, 54 min
・Planeta Petrila. Andrei Dascalescu. 2016, 80 min

全てドキュメンタリーで、建築や建築家そのものというより、建築や建築家の周りで展開する物語を撮影している感じ。とにかく全てがリアルだと感じた。

まずは『Enchanted Crimée』2018 / Sarah Bitter

日本語では「魅惑のクリミア」と訳せると思う。フランス人建築家Sarah Bitter が建てた建築の話。集合住宅にありがちな「空間の貧困」をクリアするためのさまざまな仕掛けを作っているのが印象的。
集合住宅の場合、効率などを重視して空間の豊かさ、人が快適に過ごすなどの観点が抜ける場合が多い。
(これを私は「空間の貧困」と呼んでいる。)

特に階段や広場は綺麗で、家から下を眺めた時に見える広場部分、階段から広場に声をかけたりすることができるなど、平面的だけでなく垂直的にコミュニケーションをとっているのが印象的。建築的にはもっと見たいと思った。

ただ、映画としてはつかみ所がなかったとも言える。というのも、流れは「詩的」に展開され、テーマはおそらく建築を通して行われる「振る舞い」なのだと思う。それも過去、現在、未来の4次元的な。
うまく言えないのだが、独特の空気感が流れており、最後まで言いたいことをつかむのが難しかった。

映像は美しく、建物間にワイヤーを張ってそのワイヤーを使ってダンスをするシーンは圧巻だった。ダイナミックでありながら細やかで、生活感のある動きはどこか近未来の生活を思わせたが、家具も何もない部屋を子どもが自転車に乗ってグルグル回るシーンには、なぜかなんとも言えない悲壮感を感じた。
全体としては、感情の起伏や4次元的な展開に付いていけなかった。この手の映画は苦手なんだな。
自分の頭の悪さを露呈するようだが、私は内容を可能な限り自分の中で腑に落としたい。

『The Infinite Happiness 』2015/Ila Bêka & Louise Lemoine

建築を勉強した事がある人、好きな人なら誰も知っている建築家集団BIGの言わずと知れた名作「8house」のドキュメンタリー映画。

建物全体が山のよう傾斜がついており、特徴は大きく分けると3つ。1つは最上階まで自転車で行ける事。山のように全てのフロアをスロープでつないでいる為、段差なしに最上階まで行ける。
2つ目は建築の中でコミュニティが作られている事。昔の日本の団地のように家同士がコミュニケーションをとり、また建築自体にそれを促す仕組みがたくさんある。山の中の小さなコミュニティを作ろうとしている感じ。
3つ目は周りが自然である事。牛や羊、池があったり様々な自然が顔を覗かせる。

個人的な好みを言えば好きな建築のタイプではない。周りにガラスを多用しており鳥達に被害が出たり、周り威圧感を与える程のボリューム、複雑なプログラム。建築家のエゴのようなものを凄く感じるから好きになれないのだ。

ただ、映画をみて少しだけ印象が変わった。映像は中で住んでいる人達のドキュメンタリー映像になっており、郵便配達員、ピザ屋などの配達する職業の人の描写は、建築の特徴をうまく捉えていたし、住人達のコミュニティを、老若男女をインタビューする事で分かりやすく描いていた。

特にコミュニティが印象的で、適度な関心と無関心で居心地が良さそうだった。
幼稚園や八百屋のようなものも完備されているので、足りないものはアマゾンで頼めば建築から出る必要がない。とても理想的なコミュニティと感じた。理想的すぎて凄く怖く感じるほど。
おそらく富裕層しか住んでおらず、みんなが笑顔で安全でまた綺麗なコミュニティ。完璧過ぎるコミュニティ。
外から見るとこれは、どこか気色が悪い。「クレヨンしんちゃん大人帝国の逆襲」を思い出した。これは実際に行ってみないと分からないだろう。機会を見つけて住民に話を聞きたい。

次回は残りの3つの感想を書きます。
今日はここまで!

渡辺羅須
1993年、東京都生まれ。好きな食べ物は納豆。好きな動物は猫。スポーツは大体好き。小学校~高校まではバスケをしてた。マイブームは建築。口内炎ができやすいのが悩み。