【これまでのあらすじ】美術家の高島亮三(2003年当時30歳)は「犬小屋を散歩させる」ことに美術家としての表現の拠り所を見出し、本当の犬小屋が望む生き方(岡村孝子「Kiss」より歌詞の一部を改変引用。)を探す旅に出た。これまでの旅先は、渋谷・陣馬山・高尾山など。
みなさんは、黒田三郎(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E7%94%B0%E4%B8%89%E9%83%8E)という詩人をご存知ですか? 名前は知らなくても「紙風船」という詩は、国語の教科書や便覧にも載ったりするくらいの名作なので、もしかしたらピンとくる方もいるかもしれませんね。
「紙風船」
落ちてきたら
今度は
もっと高く
もっともっと高く
何度でも
打ち上げよう
美しい
願いごとのように
(黒田三郎 1964年 詩集「もっと高く」より)
実に美しい。こんな詩が書けたら、もう死んでもいい。そして、同じ詩集の中に「海」という詩があります。この詩もまた素晴らしい。
「海」
駆け出し
叫び
笑い
手をふりまわし
砂をけり
飼いならされた
小さな心を
海は
荒々しい自然へ
かえしてくれる
…この詩を読んだ次の瞬間、私は犬小屋(名前/マリン(メス?))を連れ立ち、三浦半島に向かってバイク(カブ)で走り出していた。
もう、今回の犬小屋の散歩に、この詩以上の言葉は要らない。犬小屋(マリン)とともに荒々しい自然にかえった記録を、写真を交えて振りかえりたい。
駆け出し
叫び
笑い
手をふりまわし
砂をけり
飼いならされた小さな心を
海は
荒々しい自然へ
かえしてくれる
「岸辺のアルバム」みたいな。
…なんか様子が変。
漂流中。
漂着。犬小屋(マリン)の胴体が見当たらない…
犬小屋のマリンを海の波に消されて、これですべてが終わったわ、何もかも。
(岡村孝子「Believe」より歌詞の一部を改変引用。)
美術の中の家(完)
でも、夕暮れ時までには何処からともなく、ちゃんと帰ってきた犬小屋(マリン)。
…というわけで、次回、犬小屋の散歩(美術館・公園デビュー編)に、まだまだ続くよ。お楽しみに!
【追記】
当コラムにおいて、ここぞの場面で歌詞を引用させていただいているシンガーソングライターの岡村孝子さんが「急性白血病」と診断され、長期の治療に入ることが、4月22日(月)に公表されました。一日も早いご回復を、心よりお祈りいたします。
苦しいことに つまづく時も
きっと 上手に 越えて行ける
(岡村孝子「夢をあきらめないで」より一部引用)
波乱なシチュエーション くぐりぬけて
いつの日か 無敵になる
(岡村孝子「無敵のキャリア・ガール」より一部引用)
私待つわ いつまでも待つわ
(あみん「待つわ」より一部引用)
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