フィンランドのあれこれ
第4回「フィンランド ― お腹空間」

2021.02.12Aki

いきなりですが、この文章を書いている今日は出産予定日。
フィンランドで妊娠生活をおくって10ヶ月。
お腹の中がまだ好きなようで、出てくる気配はまだなさそう。

さて、今までに妊娠を経験したことのない私は、この10ヶ月全てが新鮮だった。
フィンランドで、しかもコロナ禍での妊娠生活は大変なこともあったけれど、
ちょっと振り返ってみようと思います。

初検診は、妊娠検査薬で陽性が出てから1ヶ月後

日本では、行きたい産婦人科に初予約の電話をかけるのが一般的。
フィンランドでは、ネウボラ(neuvola)という母子育児センターみたいなところに電話をする。ネウボラは町の各地にあって、自分の住んでいるところに近いネウボラに行く。
ドキドキしながら電話したものの、折り返しコールの案内で3日後に電話がかかってくる。しかし、初回の予約を取れたのはなんと電話から1か月後。妊娠9週目の時。

うわさのネウボラ

私のネウボラは、家から一駅離れたところにあった。
あの電話から一ヶ月。やっとネウボラ検診にまでたどり着いた。検査薬で陽性が出ただけだったので、ほんとに妊娠しているのか半信半疑だった。でも、ネウボラに行けば、心音やエコーを見てもらえる。-と、思っていた。

これから担当してくれるエルサという保健師。とても優しい雰囲気の人だった。
「妊娠おめでとう!」と祝福してくれた。
出産パンフレットをもらったり、今の気持ちについて話したりした。1時間も!
そしてエルサが「それじゃあまた次回に!」

ネウボラを後にした私と夫は “エコーや心音は…?” と首をかしげた。
ネウボラは、エコー検査をする場所ではなかった。
メンタルなどをサポートする場であることにその時、気づいた。
妊娠中期になったら、心音を聞いてもらえたり、赤ちゃんの位置をお腹の上から触って確認等はしてもらえた。

ネウボラの待合室

エコー検査はたったの2回

さて、フィンランドではエコー検査がどこで受けられるのか。
町の中にある産婦人科で受けることができる。全2回。
日本では、早かったら妊娠4週目からエコー検査、それから毎回検診ごとに見てもらえるというではないか。
しかも3D?4D?動画?のエコー検査もあるとのこと。

フィンランドは、12週目と20週目あたりで一回ずつ。妊娠は40週間あるのに、最後のエコー検査は20週目。しかも白黒の2Dのみ。
妊娠検査薬で陽性と出てから、1か月半。やっとエコー検査。
初めてのエコー検査で、胎児が元気に動いていた。やっとほっとできた瞬間だった。

それからネットで “妊娠 ○○週 エコー検査”と検索をかけて、他人の子どものエコー検査の写真を見て自分のお腹の中を想像するという技を習得した。

初エコー写真 宇宙人のような顔

出産する病院は当日にならないと分からない

ネウボラで出産はできない。フィンランドの首都ヘルシンキ市には、1ヶ所出産できる病院がある。隣の市のエスポー市にも1ヶ所出産病院がある。
事前予約はできない。陣痛が始まったら、産みたい病院へ電話をかける。空きがあればその病院へ。
なければ、第二候補の病院へ行く。

そしてこの2つの病院どちらも空きがなければ、
ヘルシンキから車で1時間ぐらい西へ行ったところの病院まで行かないといけない。

病院に行って陣痛がおさまることもある。そうしたら家に帰される可能性も。
病院では初対面の助産師さんたちが、出産のサポートをしてくれる。
そのために、出産希望書というものを事前に作成して当日渡す。
希望書には、出産についての不安、麻酔の使用、助産師に期待すること等を書く。

立ち会い・無痛分娩が主流 里帰り出産は珍しい

ネウボラで、パートナーが出産に立ち会いするでしょう、という前提で話は進んでいった。痛みを経験してこその出産という考えはフィンランドにはなく、麻酔は出産する人が選べる権利だった。

里帰り出産は日本独自の文化なのだということも知った。
ネウボラでは、周りにサポートしてくれる人はいるか。等の質問は受けたけれど、シングルマザーでない限りパートナーと協力して出産までの道のりを経験するのが普通という感じだった。
フィンランドでは産後、妊婦の母親が家に来て手伝ってくれるという方がどちらかというと多くて、妊婦が実家に帰ることは珍しい。

育児パッケージが届く

自宅配達ではないので、近くのスーパーまで取りに行く


育児パッケージは、日本でも近年取り入れている自治体が増えてきているサービス。
育児パッケージはネウボラからプレゼントされるのではなく、Kelaという社会保険庁事務所から送られてくる。(Kelaはほかにも、失業手当、産休・育休手当、学生手当、国民医療保険などを統括しているフィンランドの社会保障を支えている機関)

育児パッケージには、ベビー用品がたくさん入っている。初めて見る服や、いったい何のために使うのかよく分からないものも入っている。
でもそれをきっかけに、何のために使うのか調べることができて知識が増える。何よりたくさんもらえて嬉しい。

避妊具も入っていた。赤ちゃんの保湿クリームかと思ったら潤滑クリームが入っていた。このへんすごくフィンランドらしい。望まない妊娠ならちゃんと避妊具使いなさい。久しぶりなら潤滑剤でもどうぞ。というなんともストレートな表現。ちなみにこの潤滑クリーム、フィンランド語、英語も分からない人なら絶対に赤ちゃんに塗ってしまうと思う。

この話を職場の人にしたら、みんな爆笑していた。

2020年育児パッケージ 内容は毎年変わる

職場や周りの人の反応

自分が妊娠する前から思っていたことがある。フィンランド人たちの妊娠報告に対するリアクションがすごいなあと。まるで自分のことかのように喜ぶ。よく、映画とかで見るような感じ。
自分がその立場になると、すごく嬉しかった。誰も産休入ったら人手がなくなるとかそういう発言はなかったし、産休=退職という考えもなかった。

あと、ネウボラ検診は平日の午前中が多い。私は有給を使っていくものだと思っていた。しかし、そうではなく、検診のために有給を使う必要はないとのこと。検診は大事だから仕事のことは気にせず行っておいで。とのことだった。
もちろん職場や人にもよるとは思うけれど。

働いていた保育所の職員室

日本のベビーグッズはすごい

妊娠中に、日本の育児サイトやブログをよく見ていた。
日本とフィンランドでは考え方や文化、システムが違うこともあり参考になったりならなかったりした。

特にベビーグッズ。日本のベビーグッズの種類の豊富さはほんとうにすごい。
日本にはベビー用品の大型専門店がある。フィンランドにはそういうのはなくて、
スーパーのベビー用品コーナーや、小さな小売店でしかベビー用品は売っていない。それか、リサイクルショップ。
加えて、さすが日本の製品。機能的で便利なものが売っている。100均にも商品が充実している。

流行カラーに合わせて落ち着いた色味のベビーグッズが多い


YouTubeも活用した。次第にフィンランド人の出産経験や、ベビー用品の紹介などをよく見るようになった。

現地の人の体験談のほうが、しっくり来た。特に入院グッズ紹介。
フィンランドは2~3泊しかしないので、荷物が少ない。あと病院にあるものでどうにかなるだろう精神で荷物が少ない。
ベビー用品よりも、自分がいかにリラックスして病院で過ごせるかに重点を置いた荷造りが多い。アロマとかボディクリーム、キャンドル、お菓子等。

フィンランド人たちの出産を促すジンクス

日本では焼き肉、オロナミンCが出産ジンクスらしい。
フィンランドでは、イケアに行く、サウナであっついロウリュをかけてその後にお腹に冷水、森の中を散歩してお腹に話しかける、パイナップルを食べるなどが出産ジンクスらしい。

私の陣痛はいつ始まるのか分からないけれど、まあ気長に待っていようと思っている。
もうすぐ終わる産休ライフを楽しみます。

2月になって晴れる日が増えてきた。もうすぐ春

Aki
兵庫県出身。日本で幼稚園教諭として勤務したのち、現在フィンランドで保育士をしながら暮らしている。フィンランドでSmooth Groove Orchestraというバンドに所属している。趣味はピアノと絵をかくこと。インスタグラムhttps://www.instagram.com/finlandogo/